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暗記地理からの解放。

横浜と京都の都市規模を地理的視点から考える―横浜都市圏という発想

地理

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横浜と・・・京都!!神戸じゃなくて!

こんな質問をいただきました。

東京の衛星都市として1番に挙げられる横浜市と、大阪の衛星都市とも言えるが独自の都市圏を持つ京都市の都市規模の比較(どちらが規模が大きいか等)を根拠と共にお願いします。

質問者さんは目の付けどころが面白いですね。横浜と対比される関西圏の都市なんて言ったら普通は同じ港町として発展してきた神戸とかだろうに、あえて京都を選ぶとは。きっと以下の記事が念頭にあるんじゃないかなあと見当が付きました。

 

京都は「本当の実力」を持った都市か

この記事を初めて見たときには私も驚きました。京都の都市圏が福岡などの地方中核都市を差し置いて全国で4番目の人口を抱えているというのです。

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でもそれが「本当の実力」かと言われれば、私には異論があります。次の図は、各都市圏における自治体の相対人口を、最も人口の多い中心都市の人口を100とした時の人口が多い順に並べたものです。

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基本的にはランクサイズルールが成り立っていることが分かります。都市圏の規模が大きければ大きいほど、中心都市に対する2位以下の自治体の相対人口は大きくなります(東京23区の人口はあまりに多く、逆に面積の狭い大阪市の人口は相対的に少ないため、この2つの都市圏の間では必ずしもそうなりませんが)。中心都市が大きければ大きいほど労働力需要の拡大の規模が大きくなるため、高度経済成長期以降、衛星都市の人口増加率が高く推移し、結果として都市圏の人口規模に比例して衛星都市の人口規模も大きくなったということです(大都市圏の衛星都市は高度経済成長期以降、合併などによる人口の増加をほとんど経験していないためこういうことが言えます)。

 

この図に京都を当てはめると、やや様相が変わってきます。

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京都は福岡や札幌と同じくらいの都市圏の人口を抱えているにも関わらず、2位・3位あたりの自治体の相対人口を見ると、福岡・札幌よりむしろ名古屋と同じかそれ以上の規模であることが分かります。年間の卸売業販売額を見ておきましょう。卸売業販売額は京都市が3.6兆円に対して、大阪市は実に42.8兆円です。卸売業は生産者や1次卸などから仕入れをし、小売業者だけでなく、下流の卸売業者や一般企業に商品を販売しますから、生産者や一般企業の本社の集積が大きい、つまり都市規模が大きいほど販売額が大きくなります。人口規模から考慮すると、京都の卸売業における商圏は明らかに、より都市規模の大きい大阪に依存しているわけです。つまり京都は独自の都市圏を持っているとはいえ、少なからず関西圏の最大中心都市である大阪の影響を受けてきたわけです。その意味で「本当の実力」、すなわち都市規模という観点からすれば、ひとつの都市圏として概ね独立している福岡や札幌の方が上であると言えます。質問者さんの認識はおおよそ正しいと言えるでしょう。

 

ただ、京都における「大阪の影響」というのは卸売業の話をしたまでで、日常的な通勤・通学や最寄り品の購入といった消費行動においては「衛星都市」と言えるほど大阪の影響は受けていません(例えば京都市の大阪市への通勤・通学率は3.5%です)。京都の名誉のために「衛星都市」という用語があまり適切ではないことは付け加えておきます。

 

横浜「都市圏」を可視化してみる

横浜の話に移りましょう。横浜市の東京23区への通勤・通学率は23.1%に及ぶなど、京都とは打って変わって、横浜は完全に東京の衛星都市であると言えます。ですから基本的に横浜「都市圏」というものは存在しないことになっています。しかしどうでしょうか。横浜市は実に約373万もの人口を抱え(四国の人口が約382万です。ほとんど変わりません)、横浜駅やみなとみらい、関内など立派な都心があります。横浜市全体の昼夜間人口比率は91.5ですが、都心2区(西区・中区)の同比率は160を超えるなど、ひとつの「都市圏」を形成するには十分すぎるほどの規模であることは間違いないのです。そこでここでは横浜の本当の都市規模を把握するために、横浜「都市圏」を可視化してみたいと思います。「都市圏」に含まれる範囲には平成22年の国勢調査時点における10%絶対都市圏(横浜市に対する通勤・通学率が10%以上の範囲で、東京23区やその他の自治体への通勤・通学率の方が高くても都市圏に含める)を採用することにします。

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いかがでしょうか。横浜「都市圏」には隣接する横須賀市や藤沢市はもとより、もっぱら東京のベッドタウンという印象が強い川崎市の一部や、都内でも町田市などが含まれ、その人口は横浜市を含めて約699万人にもなります。多くの自治体が東京都市圏と被っていますし、計算方法も様々なので一概には言えませんが、もし横浜市の昼夜間人口比率が100を上回っていたとしたら、横浜「都市圏」は少なくとも名古屋都市圏と同規模かそれ以上に大きな都市圏として認知されていたはずなのです。都市圏という総務省その他の定義に該当するかしないかの差に過ぎないのに、こんなに大きな人の動きを多くの人が往々にして見逃してきたのです。

 

まとめ:人の動きを可視化するということ

「どちらの都市規模が大きいか」の結論を出すのは野暮かなと思っています。質問者さんの認識から明らかなように、京都市は独自の都市圏を抱えており、横浜市は完全に東京の衛星都市ですから、相対的な都市規模は横浜<京都であって当たり前なのです。一方で、人口から考えた時の絶対的な都市規模が横浜>京都であることに異論を唱える人もいないでしょう。私が上で検証したことは、地理的視点から考えた時に、「京都の相対的な都市規模は決して大きくない」ということと、「横浜の絶対的な都市規模は意外と大きい」ということです。

 

特に強調したいことは後者です。少し分かった気になっている人は「横浜都市圏」なんて聞いたら「何バカなこと言ってるんだ」と言うでしょう。ネット上には「横浜は東京の衛星都市だから都市機能なんてほとんど無い」なんて極論すら散見されます。思考停止の弊害です。地理で大事なことの1つは少しアタマを柔らかくして人の動きを可視化することなんだろうなと思います。今までややもすれば無かったことにすらされてきた370万市民を抱える横浜市の都市としての営みそれを支える700万人規模の「都市圏」。地理的視点に立って可視化すればこんなに大きな数字のダイナミズムが発見できるんです。そうやって世界を掴む手がかりを、これからも地理をツールに発信していけたらなと思っています。

 

 

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