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暗記地理からの解放。

【地理×選挙】福津市長選で新人が勝った理由を地理的視点から考える

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千代田区長選も良いけど・・・

世間では千代田区長選が代理戦争だなんだと話題ですが、そういった注目選挙の裏でも毎週、全国各地で首長選挙が施行されています。千代田区長選と同日(2月5日)に投開票が行われた、福岡県の福津市長選もその1つです。

さて、福津市長選では3選を目指した自民・公明推薦の現職(69歳)などを破り、元市議の新人(46歳)が当選しました。政権与党が推薦する現職候補を抑えて無所属の新人候補が当選するには当然ながら知名度や支持基盤といった高いハードルを越えなければならないため、それほど頻繁に起こることではありません。どうして福津市長選で新人は勝つことが出来たのでしょうか。実は、福津市では地理的に非常に興味深いことが起きていたのです。今回は福津市で新人が勝った理由を、地理的視点から考察してみたいと思います。

 

注:選挙は水物ですし、福津市に縁もゆかりもない管理人は福津市の政局事情にはまったく精通していません。そういった情勢は加味せず、あくまで一般論として地理的視点から1つの要因を提示するものとしてご理解ください。

 

人口が漸減→急増にV字回復!福津市の人口事情

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上の図は2005年~2017年までの福津市の人口推移を表したグラフです。グラフから一目瞭然な通り、福津市では2011年頃から、停滞・漸減傾向にあった人口が急増を始めました。なぜでしょうか。

以前の記事で書いた通り、福津市の位置する福岡都市圏は核となる福岡市の人口が神戸市を抜くなど成長を遂げています。高度経済成長期、重工業を背景に太平洋ベルト地帯で発展を遂げた三大都市圏などとは違い、福岡や札幌、仙台といった地方中核都市は「支店経済都市」などと言われ、東京や大阪に本社を置く企業の支店が置かれることでサービス業などの商業を背景に太平洋ベルト地帯から一足遅れて発展してきました。韓国などのアジアNIEs諸国やASEAN諸国、中国における工業化は安価な労働力を活かして労働集約的な工業を先進国から誘致し、工業製品を生産・輸出する輸出志向型で進められてきたため、先進国である日本の重工業は高度経済成長期以降、工場が海外に移転し産業の空洞化といった現象が起こるようになります。これによって太平洋ベルト地帯では停滞する都市が出てきます。造船業などを背景に発展してきた神戸の地位低下もこれが1つの要因と言えます。一方、そういった事情に左右されない地方中核都市は、福岡なら九州、札幌なら北海道、仙台なら東北の、数百万人を相手とする市場を背景に商業を発展させます。商業が発展すると労働力需要が拡大しますから、地方中核都市はそれぞれの地域圏内で一極集中を引き起こしながら成長しているのです。

 

福津市もその影響を受けました。都市郊外の典型的な小都市だったのが、福岡の成長に伴ってここ数年で急速に住宅開発の波が押し寄せているのです。

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今昔マップより作成

福津市中心部の福間駅南口の状況を確認しておきましょう。左が1996年頃、右が現在の地図、赤色で着色した地点が福間駅です。緑色橙色で着色した場所には住宅地が造成され、青色で着色した場所には商業施設が建設されていることが分かります。新たな住宅地にどのような世代が入居してきているのでしょうか。人口ピラミッドを確認しておきましょう。

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国勢調査に基づく2010年と2015年の人口ピラミッドで、同じ世代を同じ色で着色しています。ほとんど人口が変わらない紫色団塊の世代と、青色団塊ジュニア世代やその周辺の赤色の世代を比較してみてください。明らかに差が縮まり、人口が増えています。つまり、子育て世代である30~40代が転入し、ベッドタウン化が進行しているのです。また、その子ども世代である橙色、特にこの間に新たに生まれた0~4歳台はそれまでの世代に比べかなり人口が多いことが分かります。こういった事態が発生するとどんな問題が起こるでしょうか。

 

乳幼児急増で痛手となった?!待機児童問題

改めて地元紙を眺めてみると、やはりこうあります。

子育て世代の増加で保育施設に入れない待機児童の解消などが急務となる

ご多分にもれずここでも待機児童問題は発生していました。現職は人口増を成果として活発に訴えたようですが、その代償として発生した待機児童問題には任期中の解消が遂げられなかったようです。福津市に転入してきた子育て世代は福岡市で働く共働き夫婦が多いでしょうから、保育園に入れない、という新住民の現市政への反感が大きかったのも新人が勝った1つの理由ではないでしょうか。待機児童問題の解消には大変な道のりが付きものでしょうが、新市長にとっては最優先の課題として取り組むべき問題であると言えるでしょう。

 

「第三次ベビーブーム」という希望

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さて、改めて2015年の福津市の人口ピラミッドを見てみましょう。先ほど、0~4歳台の人口がかなり多くなったという話をしました。この世代は2010~2015年の間に生まれているわけですから、多くは転入による社会増よりも福津市で生まれたことによる自然増であると推察されます。皆さんご存知の通り、日本全体の人口ピラミッドではこのような0~4歳台で上の世代より人口が多いといった話は聞きません。団塊ジュニア世代の出産・子育て期に第三次ベビーブームは起きなかったのです。しかしどうでしょうか。福津市ではこの世代の人口が多くなっている。出生率が上がっているのです。同じような傾向は、千葉県の流山市といった子育て世代の流入が続いている地域でも見られます。

 

「自治体間競争が日本を滅ぼす」と声高に言われる中で、私は以前、あえて「自治体間競争が日本を救う」と断言しました。もはや転入人口の増加は勝手に起こるものではない。転入の中心となる子育て世代を取り込むには「子育て支援」をやっていかなくてはならない。それは裏を返すと、そうして転入人口を増やした自治体は自ずと出生率が上がっていく、という論理です。福津市や流山市の事例はその裏付けとなっているわけです。

 

国土の荒廃をもたらしかねない人口の急減が問題なのであって、私は人口減少それ自体については方策次第でいくらでも良い方向に持っていけるのだろうと思っています。しかしながら、自治体間競争は無為なタコ足食い=人口の奪い合いに過ぎないなどというネガティブな言説が駆け巡る昨今の風潮には反対です。こうやって自治体間競争に取り組み、子育て支援のレベルを上げていくことによって人口を増やし、出生率を上げている自治体はもっとポジティブに受け止められて良い。それは局地的ではあるけれども、国の宝である子どもを増やす、「第三次ベビーブーム」という希望をもたらしてくれる存在であり、「さとり世代」などと言われているこれからの子育て世代が「子育てをしよう」という希望を持てる存在だからです。福津市は人口停滞・漸減期を経て高度経済成長期以来の人口増加局面を迎えています。希望ある自治体の1つとして、待機児童問題の解消、子育て支援の拡充など、新市長には精力的に動いてもらいたいものです。

 

 

 



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