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るたろぐ

暗記地理からの解放。

で、政令指定都市、どうする?―都構想がくすぶり続ける今だから

書評 政治・選挙 地理

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るたかす(@RUTAKASU)です。スタバではバリスタと話し込むタイプです。

 

さて、おかげさまで昨日の記事が比較的反響を呼んでくれまして、Twitterでは19歳の分際に「勉強になりました!」などもったいないお言葉をかけてくださる方もいらっしゃって調子に乗ってます。

 

今日は打って変わって(?)書評を書きたいと思います。書評とか114514年ぶりぐらいに書くのでとても緊張しています。(棒)

 

 

今回の本はこれ。昨年の都構想に関する住民投票は、大都市制度の根本的なあり方を考える好機として、大きな注目を集めたことは記憶に新しい話です。最終的には反対派が「二重行政はない」と極端な主張に走ってみたり、賛成派の大阪維新の会も「西成の名を消せる」などと空間的アイデンティティを蹂躙するような主張を繰り返したことで、住民投票が党派間の政争の道具へと成り下がってしまったことは、たいへんに悔やまれることであります。

 

本書は、そんな都構想を生むに至った大都市制度の代表格たる政令指定都市について、誕生の経緯と現状、問題点と展望を整理したものです。

 

 

妥協の産物と意図せざる結果

政令指定都市は広域自治体(都道府県)の八割程度の権能を有するとされ、たとえば上下水道の管理や保健所の設置、公立の小中学校教員の採用など私たちの生活に直結するような事務が広域自治体から移譲されている点が、一般市との大きな違いになっています。

 

このような中途半端な権限の移譲となっているのは、広域自治体から独立して包括的な権能を持ちたい大都市側の意図と大都市の行財政能力を取り込みたい広域自治体の意図とが対立し合った結果、妥協の産物として1956年に確立したものであるからだと、筆者は整理しています。

 

ほんらい政令指定都市は旧五大都市(横浜・名古屋・京都・大阪・神戸)を念頭に置いた特例措置による制度であると認識されていましたが、移行の要件が「人口50万人以上」と定められたのみであったために権限の増大を魅力的とみなした多数の都市が移行を目指した結果、相模原や静岡、岡山や熊本などを含む20もの都市が政令指定都市に指定されるという意図せざる結果を生み出したとしています。

 

制度的な限界と都構想

また、少子高齢化や税収の落ち込みといった社会・経済環境の変化によってかつてのように政令指定都市が自前の財源で高度な行政サービスを市民や近隣都市に供給できず、制度的な機能は明らかに低下しているとも筆者は述べています。

 

特に大阪市では、生活保護費や公共施設の修繕といった行政コストが増大する中、他都市にも増して脆弱な財源のもとで行財政改革の効果も限定的だった経緯があります。現行の制度の歪みが顕在化する中で当時の橋下知事が提唱したのが、いわゆる大阪都構想だということです。

 

ここで留意しておきたいのが、私自身が勘違いしていたことでもありますが、都構想が提唱された背景には単に「二重行政の弊害」だけが原因にあるのではなく政令指定都市という制度が構造的に問題を抱えているという根本の要因も冷静に押さえなければなりません。

 

ご案内の通り、府市統合の流れは何も橋下知事時代に初めて打ち出されたものではなく、その前の太田知事時代、さらには政令指定都市制度が導入される以前の1953年に府議会で決議された「大阪産業都」構想の時代から受け継がれているものです。

 

政令指定都市という制度が妥協の産物であったがゆえに、制度的にさまざまな歪みが生じていることは古くから課題として共有されてきたことです。大阪都構想はそんな現状に疑問符を投げかけ、大都市にふさわしい統治制度のあり方を議論するたたき台を作り上げたことは確かです。

 

冷静な議論のために、いま「政令指定都市」を問い直す

上述したように、都構想の議論は住民投票に持ち込まれ、最終的には双方が極端な主張に走る形で党派間の争いとなってしまったことは賛成派、反対派の双方ともが反省しなければなりません。

 

良くも悪くも都構想の火種が未だくすぶり続けている以上、根本にある政令指定都市がどのような性格のものであるのか改めて問い直す意味では、本書は非常に有意義なものであると確信されます。

 

わが国における大都市にふさわしい統治制度とは何か、都構想を含めた包括的な議論を深めていく上で、現行の大都市制度である政令指定都市をさまざまな観点から考察した本書は多くの示唆に富んでいます。大都市制度の展望を描くための足掛かりとして、一読を強くおすすめします。

 

 

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