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暗記地理からの解放。

【参院選】何が「3分の2」を許したか(その3/比例区)

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さて、今回は比例区である。ひとつ前の記事で「どうやら『3分の2』の大元凶はここにあるようだ」と指摘した通り、比例区は「野党4党」の枠組みにおいては最悪の結果となったと言っても過言ではない。自民党が2000万票超、19議席を獲得した一方で、民進党はドン底だった3年前の7議席からこそ上積みはしたものの、民主党時代を含めて参院選では過去3番目に少ない議席数となる11議席、1175万票を獲得するにとどまった。党の躍進ムードに合わせて「比例9議席、850万票以上」を掲げた共産党も、3年前と同じ5議席、2年前の衆院選からは得票数を減らしさえし602万票を獲得するにとどまった。いずれも少なからず情勢報道の時点ではより良い数字が出ていたことを考えると、「野党4党」側に落ち度があったことは確実だし、「改憲4党」のうちでも自民党にとっては敵失による予想以上の結果を手にすることが出来たわけだ。救われたのは維新の5議席目を生活の党が滑り込みで1議席獲得したことで阻止したことぐらいだろうか。

 

さまざまな観点から検証していきたい。まず投開票日を迎えるまでのこと、情勢報道である。このうち投開票日を間近に控え有権者マインドが固まってきた終盤情勢においては、私の知りうる限り、時事通信が民進党、日経が共産党にとって最大値となる獲得議席数予測を記事にしている。なお各社とも社民党は「1議席程度」、生活の党は「議席獲得が難しい情勢」等の記事で一致しており、実際に社民党が1議席、生活の党も逆転勝利で1議席を獲得しており堅調だったため、2党についてはここでは検証しない。

(時事通信 参院選終盤情勢 7月3日)

比例は13議席程度の見込み。

―民進党比例予想獲得議席数 

(日経 参院選終盤情勢 7月6日)

前回5議席だった共産党は上積みが確実で7議席が有力となっている。

―共産党比例予想獲得議席数 

あえて念押しするが、これらは投開票日が間近に迫った終盤情勢での記事である。単純な話に落とし込むならば、それぞれの党が終盤情勢より《取れるはずだった》2議席、数字にして200万票を手放しているということになる(実際には民進11議席、共産5議席)。いくら情勢報道が過大な評価を下していたとしても《報道があった》事実に変わりは無いし、「3分の2」を阻止しようとする以上、落としてはならない議席であったということは言うに及ばない話である。そして各社が「17議席は確実で、18議席程度が有力」等と報じた自民党が、実際には19議席を獲得している。終盤で有意な「自民党回帰」があったことはこれだけでも明らかである。

 

次に、各党の3年前の参院選における比例区得票数と今回の比例区得票数を比較してみよう。3年前にかなりのプレゼンスを放っていた第三極の票がどこへ流れたのかを検証するのは有意義である。

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18歳選挙権の施行とともに投票率が約2ポイント上昇し投票者数が350万人ほど増えたこと、3年前には存在していたみんなの党が2年前の衆院選直前に解党し議席獲得に有力な政党が減ったことなどによって、今回比例区で議席を獲得した政党ではおおさか維新を除く6党が得票数を伸ばしている。おおさか維新が得票を減らした原因は今更言うまでもないが、その名前によって大阪・兵庫・奈良を中心とする近畿地方以外への浸透が弱かったためである(詳しくはここでは触れない)。

 

さて、グラフに目を戻すとまず、3年前にあったみんなの党の票がゴッソリ民進党に流れたような印象を受ける。実際に3年前の旧民主党とみんなの党を合わせた得票数は1189万票で、今回の民進党の得票数1175万票がほぼ同じ数字となる。ただし、3年前の第三極、すなわち当時の日本維新の会とみんなの党が獲得した票は1111万票、今回の第三極、すなわちおおさか維新の会が獲得した票は515万票であるから、その差は596万票、この間の政界再編を加味するにこの票は民進党が吸収できる票と考えられる。実際にそうなれば民進党は713万+596万=1300万票を超え、時事通信の報じた13議席獲得が視野に入っていたのである。しかし現実に流れた票はその8割に満たなかった。差分となる《流れるはずの》200万票は多くが自民党へ流れ、結果として自民党は「勝ちすぎ」であった3年前から票を減らすどころか増やしたのである。この懸念自体は、かつて私が以下のポストで指摘したことでもある(ポスト自体は衆院選をフォーカスを当てているが)。

第三極が消滅したところで、民主党政権のトラウマを抱き続ける有権者民進党に票を投じるとも考えにくい(すなわち逃げた票が回復することなく与党に流れるだけかもしれない)から、ある意味で第三極民進党セーフティーネットとなっていると言っても過言ではない。

この仮定が成立した以上、少なくない有権者が民主党政権のトラウマを抱き続けているということが事実として立証されたことになる。旧民主党は維新の党を取り込んで民進党として再出発したものの、結局はその負のイメージを拭いきれなかったことで《流れるはずの》票が入らず2議席を失ったという事実は甘んじて受け止めなければならない。「3分の2」を阻止しようとする片手間で民進党は自民党が漁夫の利を得ることを許していたのだから。

 

共産党はどうか。共産党については終盤情勢の《報道があった》事実がある以上、得票数の伸びなかった原因を一人区での野党共闘によって革新層が民進党に流れたといったレトリックを展開するのは適切ではない(馬淵澄夫代議士がそのような自説を展開しているが、これは間違っていると思う)。おそらく藤野代議士による「人殺し予算」発言が相当に響いているのだと思われるが、逃げた票は一定の流れが見えるわけではなく、あまり各党のスタンスに関係なく分散したものと考えられる。それが生活の党の逆転勝利の1議席に繋がっている可能性があるかと問われれば、まあそれもそうだろうという感じではある。

 

自民党と民進党の比例獲得議席数に絞って話を進めよう。以下の表は、旧民主党が結成されて初となる1998年の第18回通常選挙から今回までの7回の参院選における自民党と民進党(旧民主党)の比例区獲得議席数の推移である。

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自民党は2001年の第19回通常選挙以来、参院選においては実に15年ぶりに2000万票台を回復した。この間の選挙で2000万票台を獲得しているのは、この他に2004年と2007年に旧民主党が獲得したものを合わせた合計4回である。興味深いのは、このうち今回以外の3回の選挙は明らかにいずれかの政党が《勝った》選挙であったという点である。2001年には小泉旋風が吹き荒れていたし、2004年の参院選では55年体制以来はじめて野党民主党の支持率が自民党の支持率を上回った。2007年の参院選では年金問題や相次ぐ閣僚の不祥事を背景に旧民主党の小沢代表(当時)が敏腕を振るい(皮肉なことに)第一次安倍政権下の自民党を相手に大勝している。一方で今回の選挙はどうか。先の記事で述べた通り、一人区での野党共闘がほぼ完璧な成果を見せたことで、自民党としては一人区を中心に現職議員が多数落選するなど《勝ち切った》選挙とはならなかった(このことは自民党の山本一太代議士が回顧する通り)。このことは明らかに自民党の敵失による大勝を象徴する出来事であり、裏を返せば「野党4党」、特に民進党の落ち度であることは、やはり改めて指摘しなければならない。たしかに民進党にとっては試練の時期であるが、自民党に漁夫の利を得させるほど比例区で勝てていないという事実は謙虚に受け止めなければならない。

 

そもそも、である。

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「改憲4党」と「野党4党」の票数を積み上げた今回の比例区獲得票数である。「改憲4党」に対し、「野党4党」はあまりに票を得ることができていない。野党共闘という選挙になんとか勝てる戦略はあっても、これでは有権者から支持を得て政権選択選挙たる衆院選で与党ないし「改憲4党」を下すだけの力には遠く及ばない。「改憲4党」が比例区で得た得票数は総得票数の6割を優に超えるが、世論調査の結果をさまざまなファクターを排除してそのまま見たとしても、国会で改憲の議論を進めることに賛成する有権者はせいぜい5割程度である。すなわち、共産党が参院選の総括で指摘した通り「野党4党」の力量は「いまの情勢が求めるものに追いついていない、そこには大きなギャップがある」のであって、このギャップを埋めるだけの信頼や戦略が欠けていることは、残念ながら事実なのである。そのことを謙虚に受け止める姿勢だけは持ち合わせないと、いつまでも現状は打破できない、これだけは「野党4党」関係者が共有すべき認識だと私は思う。

 

 

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