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東京都の出生率は低くない?!東京の人口変化を検証してみた!

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『世界一おもしろい地理の授業』が本当におもしろい!

こんにちは。私が(勝手に)大変尊敬する、スタディサプリ地理講師の鈴木達人(たつじん)先生がこのたび、KADOKAWAさんから新刊『世の中のしくみが氷解する 世界一おもしろい地理の授業』を出版されました。

 

 

個人的な感想で恐縮ですが、大変おもしろい内容でした。教科書的な知識の羅列にとどまらない、たつじん先生オリジナルの徹底した論理的で明快な地理的エッセンスが網羅されています。たとえば。受験地理の世界では、ややもすれば「偏西風」「南東貿易風」「北西季節風」といった単語とその吹く方向ばかりが暗記されがちです。しかしたつじん先生は冒頭(p.20)で風を「地理で最も重要な自然科学にかんする事象」と言いきり、そのメカニズムを「温度」や「密度」といった観点から徹底して解説しています(p.20~29)。風が分かれば海流が分かり、さらに自然地理において最も重要なテーマである気候が分かります。受験地理の世界でバカの一つ覚えみたいに暗記させられてきた「ケッペンの気候区分」なる代物も、風が分かれば暗記することなしに論理的に分かるようになるのですよ。それをたつじん先生はこの本で証明しています。

 

正直なことを言えば、受験を目前に控える高3生にとっては分量が多い割に過去問に基いていないので、むしろ『スタディサプリ』に登録し、地理の基礎講座を受けてほしいと思いますが、そうでない人、たとえば地理を始める高2生や大学生・社会人の方で地理をやりたい、学び直したいと思ってる人には大変おすすめです。地理を見る目が変わります

 

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東京都の出生率は低くない?!

さて本題ですが、『世界一おもしろい地理の授業』の中に気になる記述がありました。

かつて、東京都知事選で、とあるジャーナリスト出身の候補者がこんなことをいっていました。「東京都は出生率が低い!少子化対策が必要である」と。

いえいえ、これは間違っていますよ。ジャーナリストが不正確なことをいってはいけません(そのせいもあってか、この候補者は落選の憂き目にあいましたが)。東京都の出生率は8.8‰で、日本の平均8.0‰より高いのです。(p.360)

なかなか辛辣な書きぶりです。実はたつじん先生、以前から事あるごとに「出生率」と「合計特殊出生率」  の違いを強調されています。東京で低いのは「合計特殊出生率」であり、「出生率」は決して低くないのです。

 

なぜでしょうか?たつじん先生は

そもそも、人口増加地域の東京都の出生率が低いわけはありません。(p.360~361)

としかお書きでないので、その意味を説明していきたいと思います。

 

まずは出生率と合計特殊出生率の定義から見ていきましょう。出生率とは「人口1000人あたり1年間の出生数」のこと。例えば出生率が8.0‰(パーミル:%の10分の1)というのは、人口1000人あたり1年間に8人の新生児が生まれているということです。一方で合計特殊出生率とは「1人の女性が一生涯に産む子どもの数の平均」のこと。女性が3人いて、Aさんは生涯に2人、Bさんは3人の子どもを産み、Cさんが1人も産まず0人だった場合、その合計特殊出生率は(2+3+0)÷3で1.6となります。

 

さて、2016年の東京都の出生率は8.5‰、合計特殊出生率は1.24でした。これが全国では出生率が7.8‰、合計特殊出生率が1.44となります(厚生労働省人口推計)。1人あたりが産む子どもの数は平均より少ないのに、全体で見れば1年間に生まれる子どもの数は平均より多いというのは、どうも変な話です。なぜこんなことになっているのでしょうか。ここで、東京都と全国の人口ピラミッドを比較してみたいと思います。

 

東京都は「出産・子育て世代」が多い

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上のグラフを見てください。これは、全国と東京都の5歳年齢階級を、比較しやすいように全体の人口に対する割合で示し、それを重ねた人口ピラミッドです(2017年)。これを見ると、東京都(赤)は20~40代の人口割合が、全国(青)と比較して非常に高くなっているのが分かります。20~40代というのはちょうど「出産・子育て世代」に当たりますね。1人あたりが産む子どもの数(=合計特殊出生率)が低くても、その子どもを産み育てることの出来る出産・子育て世代の人口が他地域より多いので、結果として生まれる子どもの数も多い、というわけですね。

 

しかしここで新たな疑問が産まれます。なぜ東京都では「出産・子育て世代」の人口割合が全国より高くなっているのでしょうか。20~40年前に東京に限ってベビーブームが起きたのでしょうか。ちょっと考えにくい話ですよね。なぜなら東京都の合計特殊出生率が低いのは今に始まった話ではないからです(参考までに下にグラフを載せておきますね)。

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実は、東京都で「出産・子育て世代」が多くなる理由には人口移動が絡んでいます。次のグラフを見てみましょう。 

 

衝撃!「20~24歳」がすごい勢いで流入する東京都

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進学や就職を機に上京したという知人・友人は、おそらく誰しも1人くらい心当たりがあると思います(あるいはあなたが当事者かもしれませんね。かくいう私もその1人です)。ですから、20代前半の人口が少なからず東京へ移動しているということは誰だって想像に難くないことだと思います。ですがその規模が衝撃的なのです。上のグラフは、5歳年齢階級による2017年の1年で東京以外の地域から東京都へと転入した日本人の人口から、東京都から東京以外への地域へと転出した日本人の人口を引いた転入超過数を、それぞれ東京都の5歳年齢階級による日本人の人口で割ったグラフです。お分かりでしょうか。東京ではわずか1年の間に、東京都の「20~24歳」の人口(約68万人)に対してその8%近い人口(約5万人)が他地域からの転入超過となっているのです。さらに「15~19歳」では同じように約3%、「25~29歳」では約2%分の転入超過となります。結果として東京都の「出産・子育て世代」の人口割合は他地域より1割~3割以上も高くなっているのです。そりゃ、いくら合計特殊出生率が低くたって出生率が高くなるわけです。

 

余談ですが、「20~24歳」前後で東京へ大きく流入した人口は、30代以降になると転出超過となりますが、その割合は微々たるものです。全体で見れば東京都への日本人の転入超過数は約7.5万人(2017年)。ちなみに2017年の東京都の人口増加数は約10.7万人でした。大まかな内訳は、転入超過による+7.5万人に加えて、自然増減(出生率-死亡率)が-0.3万人、外国人の転入超過が+3.5万人です。転出入が一切無くなれば、東京都の人口は減ってしまうのですね。余談の余談ですが、東京都は2017年に外国人人口が50万人を超えました。割合で見れば全体の4%近くです。日本全体で見れば外国人の割合は小さいですが、首都東京は着実に国際都市化していると言えそうです。国際都市の名に恥じないような、外国人に対する差別・偏見の無い街にしていきたいものですね。

 

まとめ

さて、東京都の「出生率」が高い理由についてここまでお話をしてきました。東京都は「出産・子育て世代」の割合が他地域よりも非常に高く、その理由は進学・就職などを機とした「20~24歳」前後の転入超過が極めて大規模に発生しているためでした。

 

ここで再び、出生率と合計特殊出生率の話に戻りましょう。たつじん先生には悪いですが、日本では一般的に出生率といえば合計特殊出生率を指すのが慣例なので、「出生率イコール合計特殊出生率」として単語を使っている人が一概に批判されるべきかと言えば、私自身はあまりそう思いません。大事なことはミクロとマクロの視点を使い分けるということ。ミクロな視点で見れば、東京は確かに物価も高いし一世帯で産み育てられる子どもの数は経済的な理由などから他の地域より相対的に多くない(=合計特殊出生率が低い)。ですが一方でマクロな視点で見れば、そもそも子どもを産み育てることの出来る出産・子育て世代の人口割合が他地域より高いのだから、当然生まれる子どもの数も多い(=出生率が高い)。これがたつじん先生が「出生率」と「合計特殊出生率」の違いにこだわる核心だと思っています。

 

いかがだったでしょうか。『世界一おもしろい地理の授業』には、このほかにもたつじん先生オリジナルの興味深い地理的エッセンスがたくさん詰まっています。これから地理を始めたい人、地理を学び直したい人、いちど手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

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